30日で学ぶ高校英語|Day23【仮定法のおはなし②仮定法の具体的な使い方】

前回のDay 22では、高校英語を学ぶまでは、なかなかピンとこないであろう「仮定法」について扱いました。とはいっても、会話表現の中では、実は仮定法過去を使った内容を、中学英語ではすでに習っているのですが、そのロジックについて明かされてこなかったことでしょう。

「控えめな表現」とは教わっていることだとは思いますが、なぜ【過去形=控えめ】なのかということも、日本語では間違いとされる「こちらでよろしかったですか」のような、「実現するには相手の意思が必要」、つまり自分の【そうしたい】という思いだけではどうにもならない場合をイメージしていると説明しました。そして、そのイメージは、「もし~だったなら」という表現として、過去形がなじみやすいので、英語の仮定法過去につながっています。

今回は、仮定法過去・仮定法過去完了を使った文のポイントや、仮定法を用いた構文など、もう少し仮定法について掘り下げていきたいと思います。

 

仮定法のよくある形

【仮定法過去】

仮定法過去は、過去形の控えめな印象を用いて、「もし~なら、…なのに」という、現在の事実に反する表現をしているものです。この課では、Ifで始まる従属節のことを条件節、主節のことを帰結節と表現しますが、条件節・帰結節ともに現在のことを言っていても、現在の事実としてあり得ない話で、現実の行為との距離感を表しているため、いずれも過去形を用いることになります。

 

(例1) If he had a new car, he could enjoy driving.

「もし彼が新車を持っていれば、彼は運転を楽しめるのに」

 

条件節の動詞は、一般動詞・be動詞ともに過去形となり、帰結節は助動詞が過去形となります。帰結節で用いられる助動詞の過去形は、

*would(~するだろう;意思)  *could(~できる;可能)

*should(~すべきだ;義務) *might(~かもしれない;推量) となります。

 

【仮定法過去完了】

過去の事実に反する仮定を述べ、「もし~だったら、…だったのに」という表現をします。条件節・帰結節いずれも過去時制ですが、仮定条件は帰結節を導く前提として、帰結節よりも時制が前になると考えて、条件節において仮定法過去完了(had+過去分詞)の形をつくることとなります。

 

(例2) If I had joined the party, I could have met famous singers.

「もし私がそのパーティーに参加していたなら、私は有名な歌手に会えていたのに

 

条件節の動詞は、過去完了形となり、帰結節は【助動詞+原形不定詞have+過去分詞】となります。帰結節で用いられる助動詞は、【仮定法過去】の場合と同じです。

 

ifの省略による倒置】

仮定法の条件節で、動詞・助動詞にwere, had, shouldがある場合、ifを省略し、主語と動詞を倒置することもできます。この形は文語表現で使われることが多いです。

 

(例3)Had I known him earlier, I could have got more opportunities to watch movies.

(=If I’d known him earlier, I could have got more opportunities to watch movies.)

「もし彼ともっと早く知り合っていたなら、もっと映画を見る機会を持てたろう

 

仮定法を用いた表現

仮定法の領域でも、独特な表現がいくつか存在します。一部、書き換えも含めて、以下にいくつか例を挙げていきます。

 

I wish S’ + V’】/S’V’だったなら(困難や不可能な願望)

I wishのあとのS’+V’になる前に、接続詞thatが入りそうでもありますが、実際はそのthatは省略されることが標準です。とくに、誘いに対する婉曲的な断りなどに用いられることが多いです。

 

(例4) I wish I could take you there.

「私があなたをそこにお連れできればよいのですが

従属節を仮定法過去のcouldにすることで、現在の実現可能性が低い内容について表すことができます。この例では、「実際には連れて行くことはできない」という、婉曲的な断り方となっており、会話でも丁寧な表現として好まれる表現方法となっています。

 

過去の実現不可能だったことに対する願望は、従属節で過去完了を用いることで表現することができます。

 

(例5) I wish I could have traveled abroad.

「海外旅行ができていればよかったのだが」

主節を現在形、従属節を仮定法過去にすることで、「今から過去の仮定を叶えに行くことは到底できない」という感覚を引き出すものです。

 

If only S’ + V’ ~!】/S’V’だったなら

「もしS’がV’でさえあれば」という感覚となり、I wish ~よりもやや強い表現となります。文末には感嘆符 ”!” をつけることが多いです(つけないこともあります)。使い方はI wish S’+V’~と同じです。

 

(例6)If only I were rich!

「お金持ちだったらいいのになあ」

 

It is (high) time (that) S’+V’~】/そろそろ~してもよいころだ

これを用いた文では、主節で形式主語を用いることで、「~という時間だ」という意味を印象付けています。そして、従属節で仮定法過去を用いるのですが、現在の事実に反するだけではなく、【実際にはもうすべき時間であるのに、まだしていない】ということを表しています。なお、highのかわりにaboutを入れると、【そろそろよいころだ】と促すイメージになります。この構文でも、接続詞thatは省かれる傾向にあります。

 

(例7) It is time you tried to solve this problem.

(=It is time you should try to solve this problem.)

「君はそろそろこの問題を解いてもよいころだ

 

as if ( as though ) S’+V’】/まるで~であるかのように

・as :~として

・if :もし~ならば

ということで、このas if ~の表現は、「~であると仮定しているとして」という捉え方になります。

 

(例8)I read this book as if I became a voice actor.

「私はまるで声優になったかのように、この本を読む」

従属節を仮定法過去にすることで、主節の時制の時点で、「まるで~であるかのように」という意味を持たせることができます。

 

また、従属節を仮定法過去完了にすることで、主節の時制の時点よりも以前に「まるで~であったかのように」という意味を持たせることができます。

(例9)He tried to talk with the children as if he had become a child.

「彼はその子供たちに、まるで自分が子供になったかのように話をしようとした」

過去の「話をしようとした」時点に、それより前の時点で仮定されたであろう「自分が子供である」ことを持ち込むイメージから、過去完了を用いた表現になっています。

 

If it were not for~】/~がなければ

・if :もし

・it :形式主語(「ない」対象のものを主語に持ってくると長くなることもあるので)

・were :ある(仮定法過去で用いるbe動詞。ただし口語ではwasを使うこともある)

・not :~でない

・for :【対象を示す】

これらの語で、「もし~がなければ」という意味の表現を作ることができます。また、「もし~がなかったら」という、過去の事実に反する内容では、仮定法過去完了を使うことになります。書き換えは、Without~, や But for~ となります。

 

(例10) If it were not for his help, I couldn’t finish doing my homework.

もし彼の助けがなかったら、私は宿題を終わらせられないだろう

【彼の助けなしに=現在、終わらせられない=現在】

 

仮定法過去完了を使う場合、be動詞を過去分詞にするIf it had not been for~とします。

(例11) If it had not been for his help, I couldn’t have finished doing my homework.

もし彼の助けがなかったら、私は宿題を終えられなかっただろう

【彼の助けなしに=過去、終わらせられなかった=過去】

 

as it were】/いわば

文中に挟むか、文末に置く使い方をします。

 

(例12) His attitude is, as it were, making fun of himself.

「彼の態度は、いわば、自分自身をからかうようなものだ」

現代では、as it wereの代わりに、so to speak ( so to say )などがよく用いられます。

 

練習問題

29.次の(1)~(4)までの英文が、日本語と同じ意味になるとき、( )に当てはまる語句をそれぞれ選びましょう。

 

(1)If I (        ) young, I could stay up late.

「もし私が若かったら、夜更かしできるのに」

 

(2)If I (       ) (         ) English harder, I (         ) be an interpreter now.

「もし私が英語をもっと熱心に勉強していたら、今頃通訳になっていただろうに」

 

(3)If (             ) he (          ) a kind man!

「彼が親切な男性だったらよかったのに!」

 

(4)It’s (            ) (            ) the train (          ).

「そろそろ列車が来ても良いころだ」

 

30.次の(1)~(3)にある英文①・②の組み合わせが、ほぼ同じ意味になるとき、( )にあてはまる言葉を埋めましょう。

 

(1)① If I’d believed what he said, I could succeed in running my company now.

②(        ) I (        ) what he said, I could succeed in running my company now.

 

(2)① Without reading this book, I couldn’t understand what our teacher said.

② If it (     ) not (       ) this book, I couldn’t understand what our teacher said.

 

(3)① If only I had enough time!

② I (         ) I (        ) enough time.

 

練習問題28.の答え

(1) If he ( goes ) there, I’ll go with him.

「もし彼がそこへ行くなら、私も行きましょう」

→主節でwillが使われているので、直接法としてみる。

 

(2) If I ( were ) a bird, I could fly in the sky freely.

「もし私が鳥だったら、空を自由に飛べるのに」

→現実的にありえない話で、主節がcouldになっているので、if節では仮定法過去。

基本的に、仮定法過去のbe動詞はほぼwereになる。

 

(3) If you ( got ) one billion yen, what would you do?

「もしあなたが1億円を手にしたら、何をしますか」

→現実的に可能性の低い話として、主節でwouldを使っているため、if節では仮定法過去。

 

(4) If I ( had ) the opportunity to use this room, I could take an enough rest.

「もしその部屋を使う機会があったら、十分な休息をとることができるのに」

→主節でcouldを使っているため、仮定法過去を狙いに行く。

 

(5) If I ( had ) had my own car, I could have taken you there.

「もし車を持っていたなら、あなたをそこへお連れすることができたのに」

→主節で仮定法のcould have takenを使っていて、日本語訳でも「あなたをそこへお連れすることができた」となるので、過去の話をしている。よって、if節は仮定法過去完了となる。最初のhadは、過去完了の目印としての助動詞で使っている。このように、助動詞、本動詞ともにhadとなる問題は出題されやすいので、覚えておきましょう。

 

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