否定文は、副詞notや形容詞noを用いるというイメージがあると思います。たしかに、おおかたの否定文は、notやnoを用いるのですが、notやnoを使わずに否定の意味を表す文も存在します。
今回は、実は案外奥が深い、否定文の世界をお伝えしたいと思います。否定を表す語はたくさんありますので、新たな発見があるかもしれません。
否定語句
否定語句は、否定疑問文として文頭に置かれる以外は、否定したい語句の直前に置かれます。そして、否定を表す語句として最も頻繁に使われるだろう言葉は、副詞のnotでありましょう。このnotを基準としたとき、それよりも否定の意味が強い語と弱い語がありますので、次の通りご紹介したいと思います。
【強い否定語】
*never / 「(どんな場合でも)決して~ない」「一度も~ない」(not + ever)
(例1) He will never understand what you say.
「彼は君の言っていることなど決して理解しない」
*no / 「(やや強く)~ない」
(例2) He is no young. He must be over sixty years old.
「彼は若者なんかではない。60歳を超えているに違いない。」
(例3) My new glasses are no heavier than this pen.
「私の新しい眼鏡はこのペンくらい軽い」
※【no+比較級】にすると、決して【比較級】ではないというイメージから、「むしろ【反対の意味】だ」という気持ちが込められます。
【弱い否定語】
*hardly ・ scarcely 「(程度)ほとんど~ない」
(例4) I hardly speak in front of strangers.
「私は見知らぬ人の前で話すことはほとんどない」
→「少しは話すことがある」という意味で、notより弱い否定となります。
*seldom ・ rarely 「(頻度)めったに~ない」
(例5) I rarely watch TV.
「私はテレビをめったに見ない」 【→rare(希少な)+ly(副詞化)】
*few「(数)ほとんどない」/little「(量・程度)ほとんどない」
a few や a littleは「少しある」といった意味になりますが、これは、冠詞aをつけることで、「ほとんどないもの」が「観念できる状態」になるからです。しかし、冠詞がないと「観念する」ものがないため、「ほとんどないもの」という意味になってしまいます。
(例6)We have few followers and almost no influence.
「私たちには賛同者がほとんどなく、影響力もほとんどない」
(例7)He little considers the matter.
「彼はほとんどその問題について考慮に入れない」
否定の意味を強調したい場合、否定疑問文でなくても文頭に否定語句を持ち込み、主語と動詞を倒置させることもできます。
(例8)Never have I seen such a beautiful place.
「これまでこんなに美しい光景なんて見たことがない」
notやnoを用いない否定の慣用表現
notやnoを用いなくても、否定の意味を表す表現がいくつかあります。一見ただの疑問文や平叙文に見えるかもしれませんが、語句の意味やイメージを持つことで、否定文だということがお分かりいただけるかと思います。
修辞疑問文
「ほとんどそんなことはないだろう」という内容を、あえて質問にすることで、「誰がそんなことを」「どうしてそんなことが」といったニュアンスを出して、「いや、そんなことはないはずだ」という予想を含んでおく表現が、この「修辞疑問文」というものです。
(例9) Who knows what will happen tomorrow?
「誰が明日起こることなど知りうるのでしょうか」(誰も知るわけがない)
疑問詞と動詞の間に、in the world(一体全体)などを入れると、なお修辞疑問文の引き合いに出したい「否定」の意味を引き立たせることができます。
熟語表現
*anything but~ 「決して~ではない」
(例10)His behavior is anything but polite.
「彼のふるまいは決して礼儀正しいものではない」
この例では、S+V+Cの文で、補語Cのところで「何か」ではあると言っているものの、but「~ではなくて」+形容詞politeと言う語順で、「礼儀正しいものではない何かである」との直訳から、「決して礼儀正しいものではない」という否定の表現になっています。
*far from~ 「~どころではない」
(例11)My business is far from “going concern.”
「私の事業は“継続企業の前提”どころではない」
直訳すると「“継続企業の前提”からは程遠い」という意味になり、そこから否定の「~どころではない」という意味が出てきています。
*above (beyond) ~ 「~できない、~ない」
「超越している」というイメージから、感覚的に近いところにないという否定のニュアンスを表します。
(例12)The fact that he hit someone with his car is beyond doubt.
「彼が誰かを車ではねたということは疑いようがない」
この例では、「疑いの向こう側」、反対側…つまり、疑いようがないというニュアンスでbeyondが用いられています。
練習問題
36. 次の(1)~(6)の英文が、日本語の意味になるとき、文中の( )に当てはまる語句を、ア~エからそれぞれ選びましょう。
(1)I have ( ) been to Sapporo.
「私は一度も札幌に行ったことがない」
ア ever イ not ウ never エ no
(2)I ( ) read newspaper.
「私はほとんど新聞を読まない」
ア hardly イ rarely ウ don’t エ am not
(3)There is ( ) use crying over spilt milk.
「覆水盆に返らず」
ア no イ rarely ウ hardly エ never
(4)His words are ( ) but rude.
「彼の言葉は決して失礼なものではない。」
ア nothing イ something ウ anything エ somewhere
(5) ( ) in the world knows what will happen next year?
「いったい誰が来年起こることを知りえるのだろうか」
ア Nobody イ Who ウ What people エ How many
(6) Now, there is ( ) knowing when the next train leaves.
「今、次の列車がいつ発車するのかを知ることはできない」
ア not イ none ウ nor エ no
練習問題35.の答え
(1)エ I thought you ( could find ) his house easily.
「私はあなたが彼の家を簡単に見つけられると思った」
(2)エ He said that he ( has got ) his new cellphone.
「彼は新しい携帯電話を手に入れていたと言っていた」
(3)ア My son learned that water ( changes ) into water vapor at 100℃.
「私の息子は、水が100℃で水蒸気になることを学んだ」
(4)イ My father said that if I studied math more I ( could ) become a scientist.
「私の父は、私がもっと数学を勉強していれば、私は科学者になれていたのにと言った」
練習問題36.の答え
36. 次の(1)~(6)の英文が、日本語の意味になるとき、文中の( )に当てはまる語句を、ア~エからそれぞれ選びましょう。
(1)ウ I have ( never ) been to Sapporo.
「私は一度も札幌に行ったことがない」
ア ever イ not ウ never エ no
(2)イ I ( rarely ) read newspaper.
「私はほとんど新聞を読まない」
ア hardly イ rarely ウ don’t エ am not
(3)ア There is ( no ) use crying over spilt milk.
「覆水盆に返らず」
ア no イ rarely ウ hardly エ never
(4)ウ His words are ( anything ) but rude.
「彼の言葉は決して失礼なものではない。」
ア nothing イ something ウ anything エ somewhere
(5)イ ( Who ) in the world knows what will happen next year?
「いったい誰が来年起こることを知りえるのだろうか」
ア Nobody イ Who ウ What people エ How many
(6)エ Now, there is ( no ) knowing when the next train leaves.
「今、次の列車がいつ発車するのかを知ることはできない」
ア not イ none ウ nor エ no
※「知ること」が「ない」で no knowingと考える。
講座を修了した方へのメッセージ
お疲れさまでした。
ただ「こういうものだから覚えてね」というものではなく、1つ1つの言葉や、その使われ方にも、意味があるということを、この講座を通してお伝えしたかったのですが、イメージはつかめましたでしょうか。
英語は言語ですので、日本語訳にとらわれるよりも先に言葉自体が持つ意味をイメージできるかが大切になります。
本講座が、英語の言葉のイメージを意識づけ、種々の表現を会得するための一助になることができましたら幸いでございます。
このたびは、ご覧いただきありがとうございました。