動名詞は、動詞の動作をしている状態を名詞にした言葉であり、動詞的機能と名詞的機能の両方を持つ言葉であることは、前回のDay 20にてご説明いたしました。では、動名詞をもう少し文法的に掘り下げると、どのような感じになるでしょうか。
今回は、前回の総論を踏まえ、動名詞の文法と構文についてご紹介したいと思います。中学英語ではあまり見えてこなかった、動名詞の世界をお伝えできればと思います。
前置詞のあとで動作を表す場合は、必ず動名詞!
前回の課でも少しだけ触れましたが、at, in, ofなどの前置詞のあとで、動作を表す場合は、必ず動名詞になります。特に、句動詞や熟語などで前置詞を用いた後の動詞の形については、中学英語でも高校英語でも問われやすい内容ですので、覚えておきたいところです。
前置詞とは、そもそも【状況、場所、時などを表す語句の前に置いて、位置関係などを導く言葉】といえます。そして、状況・場所・時などを表す語は、それぞれ名詞や形容詞となります。
そのため、前置詞のあとで動作を表すには、その動作をしている場面を取り出して、「~すること」というように、名詞化しなければならないことになります。
(例1)He is in charge of operating machineries.
「彼は機械操作の担当者だ」
この例では、be in charge of~ 「~を担当する」という熟語の終わりに、前置詞ofがあります。そのため、「~することの担当」という意味で、直後の「操作する」operateが動名詞operatingとなりました。
動名詞の意味上の主語
動名詞を、動詞的機能から考えてみると、動名詞の動作を「誰かが」するという表現をする場面があります。では、その「誰か」を表す際は、主格・所有格・目的格のどちらを選べばよいでしょうか。また、「誰か」を表さない場合はどういった場合でしょうか。簡単にまとめましたので、ご参照ください。
【誰か】を表す場合
本動詞の主語と、動名詞の意味上の主語が異なる場合に、原則として【所有格】【目的格】のいずれかを用いて表します。
(例2) His running starts early every morning.
「彼のランニングは毎朝早くに始まる」(His が所有格)
この例では、本動詞が「始まる」で、その主語は「彼のランニング」となります。動名詞「ランニング(走ること)」の主語は「彼」となるので、本動詞の主語と、動名詞の意味上の主語は異なっています。
そして、【走ること】という行為は、【誰のものか】ということを表すために、動名詞の意味上の主語は【所有格】(his)となります。
(例3)He insists on my(me) running early morning.
「彼は私が早朝に走るようにと言ってきかない」
この例では、「私の走ること(my running)」という解釈と、「私に主張する(on me)」という解釈のいずれもとることができるとされています。前者は文法のロジックが通りやすい文語的表現で、後者は口語的な言い方で好まれる表現です。
(例4)I’m looking forward to your children(‘s) coming here again.
「私はあなたのお子さんが再びここに来ることを楽しみにしている」
この例では、人称代名詞ではなく、普通の名詞が動名詞の意味上の主語です。こういった場合は、所有格の意味をとる場合であっても、(‘s)をつけないことが多いです。
動名詞を用いた慣用表現
それぞれの単語の意味をつなげてイメージを拡張することで、慣用表現を使うことができるようになります。ここでは主なものをご紹介します。
(例5)It is no use crying over spilt milk.
「覆水盆に返らず」(原義→こぼれたミルクについて泣いても無駄である)
It is no use ~ingで「~をしても無駄である」という慣用表現となります。ここのuseは名詞で「使い道」という意味になりますが、「~をすることの使い道がない」というところから、「~をしても無駄だ」という訳がされることになります。
また、この「覆水盆に返らず」の表現は、よく使われる英語のことわざでもありますので、覚えておくととても便利です。
(例6) I feel like sleeping. I don’t want to go anywhere today.
「寝たいような気がしている。今日はどこにも行きたくない」
この例では、動名詞で表す動作の内容に、likeの持つ「親和性」のイメージが絡み、本動詞で「そう感じる」という表現の組み合わせである、feel like ~ingを用いています。
(例7) I never go out without bringing my laptop.
「私は外出するときはいつも、ノートパソコンを持ち歩いている」
この例では、本動詞の動作は、動名詞の動作をすることなしに決してしないというニュアンスになります。つまり、動名詞の行動の内容と、本動詞の行動の内容は、常にどちらも欠かさずするという感覚になります。
(例8) Would you mind my smoking here?
「私がここでタバコを吸うのはかまいませんか」
(原義:あなたは私がここで煙草を吸うことを嫌がりますか)
動名詞は消極的な動作に対して用いられることから、mind(嫌がる)のあとに ~ingをつけることも好まれます。
(例9)I cannot help sleeping now because I’m too tired.
「私はとても疲れているので、私は眠らずにいられない」
cannot helpの形にすると、「~することをどうにもできない」という感覚から、「~せずにはいられない」と言う意味になります。
練習問題
27.次の(1)~(4)の英文①・②の組み合わせが、ほぼ同じ意味になるようにするとき、( )に当てはまる語句を答えましょう。
(1)① He sometimes drives his car roughly.
② ( ) ( ) car is sometimes rough.
(2)① Every time she goes to this park, she brings her lunch there.
② She ( ) goes to this park ( )( ) her lunch there.
(3)① She hates to be entered her garden by children.
② She minds children ( ) her garden.
(4)① There is no avoiding this bad circumstance.
② ( ) is ( ) to avoid this bad circumstance.
練習問題26.の答え
(1)① To collect difficult books is his strange hobby.
②( Collecting ) difficult books is his strange hobby.
「難しい本を集めることが彼の変わった趣味だ」
(2)① I’m proud that I have been evaluated as a good worker.
② I’m proud of ( having ) ( been ) ( evaluated ) as a good worker.
「私はよい勤労者として評価されてきたことを誇りに思う」
(3)① I’m reluctant to clean my room because I’m too tired.
「私はとても疲れているので、部屋を掃除する気が起きない」
② I mind ( cleaning ) my room because I’m too tired.
「私はとても疲れていて、部屋の掃除をいやがっている」
(4)① He denied the fact: he can draw picture well.
「彼はその事実を否定している。その事実とは、彼が上手に絵を描けるということだ」
② He denied ( being ) able to draw picture well.
「彼は上手に絵を描くことができるのを否定している」