前回の課で、完了形の概要についてお話ししましたように、完了形は、「ある動作の終わりごろ(完了相)の状態」を「持っている」というイメージが文法になったものです。中学校で習った【have(has)+過去分詞】で表される「現在完了」のほかに、高校では、【had+過去分詞】で表される「過去完了」、【will have+過去分詞】で表される【未来完了】という表現方法もあります。
今回の課では、「現在完了」「過去完了」「未来完了」についてお話ししたいと思います。まずは、現在完了から見ていきましょう。
現在完了とは
過去のある時点の動作を過去分詞として、【have(has)+過去分詞】の形で表すことで、現在に結びつける文法を「現在完了」といい、その用法には、【完了・継続・経験】の3種類があります。さっそく、【完了用法】から見ていきましょう。
【完了用法】

この例では、現在の時点では持参する動作は完了しています。しかし、今しがた持ってきたところだというお話をする際に、過去形のbroughtだけを用いてしまうと、時制のつながりが切れてしまうことになります。
そこで、この完了用法を使うことにより、現在を基準にしたつい最近の時点で、動作が「完了した状態」を、「持つ」と表すことで、現在時制のお話と結び付けていることになります。
<キーワード>
already(すでに), yet(もう/まだ), just(ちょうど), now(今)など
【継続用法】

この例では、「知っている」という状態動詞をとります。状態動詞は基本的に進行形にはしません。もしこのknowを進行形にすると、「知って忘れて」を繰り返すか、「絶え間なく新しいことを知り続ける」という感覚になってしまいます。そこで、過去の時点で知ったことを、今に結び付けて、「この2年間、知った状態を持っている」という感覚にするため、have knownという表現にしています。
<キーワード> since(~以来), for(~の間)など
【経験用法】

この例では、現在ではもう終わっている、過去から現在までの間にした「動作の経験」を、hasを用いて現在形に結び付けていることになります。
<キーワード>
ever(今までに), never(一度も~ない), ~times(~回), before(以前)など
現在完了進行形
現在完了進行形とは、過去のある時から現在に至るまでの間に、動作が継続していたことを、現在時制で結びつける表現です。使われる形は、【have/has been +動詞の~ing形】です。
過去のある時点から現在まで動作が続いていることを、現在分詞~ingで表すのですが、その前につくbe動詞は、have/hasがあるため、「完了相」(くわしくはDay3を参照)をとる「過去分詞」beenにする必要があります。
次の図では、オレンジの矢印で表される動作の継続状態【be動詞+ ~ing】が、have/hasを用いることで、現在の時点に持ち込まれていることを表しています。

一つ目の文では、過去のある時点から1時間、馬に乗っていた動作を、現在時制で表しています。二つ目の文では、早朝から今もずっと、馬に乗っているということを表しています。いずれも、オレンジ色の矢印で表されている「動作の進行状態」が、現在に持ち込まれていることを表しています。
なお、進行形の使い方については、Day 4【進行形のおはなし】に準じます。
過去完了とは
現在完了が、【have/has+過去分詞】を使うことで、現在までの動作の【完了・継続・経験】を表すものでしたが、【had+過去分詞】を使うことで、過去のある時点までの動作の【完了・継続・経験】を表すこともできます。これが「過去完了」です。
また、過去の時点よりも前に行った動作全般も、用法に関係なく、過去完了で表すことができます。
現在完了では、基準となる時点が「現在」であるのに対し、過去完了では、基準となる時点が、過去のある時点となるため、現在にはその話がつながらない、という点を理解しておくことが大切です。
それでは、過去完了の【完了用法】から、イメージ図をみていきましょう。
【完了用法】

この例では、「彼らがソファに座ったとき」が、過去のある時点となります。
そして、その時にはもう、「彼は数枚の書類を持参していた」という状態を、hadを用いて、「持っていた」と表すことになります。書類を持参した行為は、彼らがソファに座ったときに終わっているので、現在に及ぶ話ではありません。
【継続用法】

この例では、「彼が病院に行った」時点を基準にして、その時までずっと「心配していた状態」を過去分詞で、「持っていた」をhadで、それぞれ表しています。現在では、少なくとももう病院に到着していることを示していますので、病院に行くまでの健康の心配はなくなっている(その後も心配している状態が続く場合は、あとで述べる過去完了進行形を使うか、または心配する内容が【病院に行ったあとの別の心配】に変わるかのどちらかとなります。
【経験用法】

この例では、過去に彼がここに来た時点を基準として、それよりも前に仕事を毛嫌いした経験を持っていたということを表しています。「ここに来た」という過去の時点では、もう毛嫌いすることがなくなっているので、現在に及ぶ話ではありません。
以上3つが、現在完了の3用法【完了・継続・経験】を過去完了にしたものとなります。
そのほかに、過去完了ならではの表現のしかたがありますので、こちらもイメージ図を見てまいりましょう。
過去のある時点より前の動作

この文では、彼が酔っ払ってネクタイを額に巻いて踊った過去の時点より前に、飲み過ぎたという状態を持った(had)ということになります。
そのほかにも、
(例)On my way home, I realized that I had left my cellphone in my office.
「帰り道の途中、私は携帯電話を会社に置き忘れてきたことに気づいた」
など、that節をはさんで、過去を基準にした時系列の前後関係をいう場合にも使うことができます。
過去完了進行形

現在完了の文から、基準となる時点を過去のある時点に移し、その時点までに動作が継続していたことを表すのが、「過去完了進行形」です。
上の文では、過去の時点(ベルが鳴った)を基準として、それまでに彼が馬に乗る動作を継続していたことを表し、下の文では、昨日の時点を基準として、おとといからずっと馬に乗る動作を継続していたことを表します。
形は、いずれも【had been ~ing】となります。
※仮定法などに伴う時制の一致については、それぞれの課で取り扱います。
未来完了
【will have+過去分詞】の形にすると、未来のある時点までの動作の【完了・継続・経験】を表す「未来完了形」となります。また、【will have been ~ing】にすると、未来のある時点で動作が完了しているという「未来完了進行形」という表現になります。
ただ、未来完了形(進行形を含む)は口語(話し言葉)では固い印象を与えることがあるので、あまり多く用いられず、文語(書き言葉)で用いられることが多いです。
例文を見て参りましょう。
*完了… She will have done her homework by next Monday.
「彼女は来週月曜までに宿題を終えているだろう」
*継続… I will have lived here for eight years by 2020.
「私は2020年までにここに8年住んでいることになるだろう」
*経験… I will have visited there at least twice by the time I get married.
「私は結婚するときまでに、そこを少なくとも2回は訪れているだろう」
いずれも、未来の時点(will)で「動作の終わりごろの状態」(過去分詞の状態)を持っていることになる(have)というニュアンスで、【will have 過去分詞】の形をとっています。
また、未来のある時点を基準として、その時までに動作やできごとが継続しているという「未来完了進行形」という表現もあります。
*例… This type of train will have been running for over thirty years by 2020.
「このタイプの列車は、2020年までに30年超の間走り続けていることになろう」
練習問題
8.次の(1)~(10)の文中の( )内に当てはまる語句を、ア~エからそれぞれ選びましょう。
(1)We( )such a wonderful place like this before!
ア didn’t see イ weren’t seen ウ have never seen エ don’t see
(2)They( )on this small hill for twelve years.
ア lived イ live ウ have lived エ are living
(3)It ( ) since last week. We call this season “tsuyu” in Japanese.
ア rained イ rains ウ is raining エ has been raining
(4)This building ( ) on the hill now.
ア stood イ stands ウ is standing エ has been standing
(5)I( ) you for a long time. I’m very glad to see you again now.
ア don’t see イ didn’t see ウ haven’t seen エ hadn’t seen
(6)”How about another cup of coffee?” —“Thanks, but I( )enough. now”
ア had イ have had ウ had had エ have
(7)Before I came home, it( )raining.
ア stops イ has stopped ウ had stopped エ would stop
(8)Until I arrived in Germany, it( )my dream to go abroad.
ア had been イ had become ウ has been エ has become
(9)According to the newspaper today, a drunk man ( )the door of a liquor store until it broke up.
ア was hitting イ is hitting ウ has been hitting エhad been hitting
(10)By the time all the war ends, there ( )a large number of the dead.
ア will be イ will have been ウ would be エ are
練習問題6.の答え
(1)経験…everを頼りに判断する。
「君は今までにこんなバカげた話を聞いたことはあるか」
(2)完了…justを頼りに判断する。「私はちょうど部屋を掃除し終えたところだ」
(3)継続…forを頼りに判断する。「この4年間で倒産件数は増えてきている」
(4)継続…sinceを頼りに判断する。「私の祖父は子どものころからそこに住んでいる」
(5)完了…alreadyを頼りに判断する。「彼はすでに長期の旅行にでてしまった」
練習問題7.の答え
(1)過去の話を現在につなぐ「現在完了」の表現の中では、過去の時点に限った話をすることができないので、過去の時点を表す語と併存できない。したがって、
* I got a new car yesterday. 「私は昨日新しい車を手に入れた」などにする。
(2)は(1)と同様の理由で、「現在完了」と、過去を表す「二年前」という語は併存できない。したがって
* The economic recession ended two years ago. 「2年前、経済不況は終わった」などにする。
(3)過去のある時点をたずねるWhenから始まる疑問文では、完了形を併存させることはできない。したがって、
* When did you leave for Guam?「いつグアムに向けて出発したのですか」にする。