中学英語では、2年生から【to+動詞の原形】という形の「to不定詞」という文法を習いました。そして、その用法として、「名詞的用法」「形容詞的用法」「副詞的用法」の3つを習ったことでしょう。
しかしながら、そもそも不定詞とはどういう言葉であるかということまでは、しっかりとした説明を受けていたでしょうか。また、不定詞=to不定詞しかないというイメージは持っていないでしょうか。
まずは、このDay 16で「不定詞」とは、どのような言葉なのかというイメージを持っていただきたいと思います。このイメージがなんとなくでもできれば、理解が深まるのではないでしょうか。
①動詞を起源とする言葉である。
まず1つ、to不定詞を用いた例文を見てみましょう。
(例1) I want to watch soccer. 「私はサッカーを観戦したい」
この文を、1語ずつ英語の順番で日本語にすると
「私は/欲する/(方向→)こと/観る/サッカー」となります。
ここで、to watchに着目すると、「観る方向」というイメージが浮かびます。want to watchでは、「観る方向を欲する」という意味となります。英文の中では、基本的に一つの節の中では本動詞は1回しか使いません。その1回は、実際に動作として大切な動詞に使います。
この文では、「観る」よりも「欲する」が重要となります。なぜなら、「欲する時点」では、「観ることは実現していない」からです。
したがって、本動詞に【欲する(want)】を当てはめて、欲する行為の【方向に(to)観る(watch)】という語順をとることになります。
【観る(watch)】という言葉は、それ自体は動詞ですが、「する方向で(to)」をつけることで、「観ること」という名詞の働きを持たせることができるようになります。このことから、不定詞は、動詞を起源とした、名詞などのほかの品詞となる言葉の働きをもつ言葉であるといえます。
②主語の人称や単数・複数を定めない言葉である。
もともと、英語の動詞は、他のヨーロッパ圏の言語と同じように、14世紀頃までは、人称や単数・複数の違いにより、語尾の活用が細かく分かれていました。知識階級が黒死病でたくさん亡くなったなど、所説ありますが、14世紀以降で、こうした語尾の活用もシンプルになっていったと言われています。
おそらくその名残からでしょうが、本動詞は、主語の人数や、単数・複数によって、語尾が変わることがあります。一般動詞であれば、いわゆる3単現(3人称・単数・現在形)の-(e)sがつくことがありますが、be動詞では、主語の人称や単数・複数によって使い分けがされていますよね。
ところが、この「不定詞」の部分では、主語の人称や単数・複数によって使い分けをすることがありません。なぜなら、あくまでも使い分けすべきなのは、文の意味の中核となる本動詞だからです。もっと簡単に言うと、あくまでも【誰が(何が)どうした(どんなだ)】が文のメインになるからです。
このことから、「不定詞」は、主語により使い道を限定されない(不定)ことば(詞)である、といえるのです。
to不定詞と原形不定詞
不定詞には、【to+動詞の原形】で表す「to不定詞」と、【動詞の原形】で表す「原形不定詞」の2種類があります。to不定詞は、「矢印の先」をイメージする言葉ですので、「する方向」になじむ表現です。原形不定詞は、動詞の原形をそのまま用いることから、「実際の動作」になじむ表現です。
例文で、そのイメージの違いを確認しましょう。
(例2) I’ll bring some books to read in the long flight.
「私は長いフライトで読む(ための)本を数冊持っていく」
この文では、【読む行為(read)は、本を持ち込む(bring)行為の先(to)にある】という感覚になり、長時間の飛行中に、【読む方向にある】本を持っていくという内容を表しています。
ただし、熟語などで、「すること」という表現の前にtoを必要とする場合は、toが前置詞であるのか、不定詞の目印であるのかを吟味する必要があります。
(例3) We are looking forward to serving you again.
「また(あなたにお仕えすること→)のご利用をお待ちしております」
この文では、「~を楽しみに待つ」という熟語 look forward toが用いられていますが、このtoは、楽しみにする内容、つまり名詞(または名詞句)につけられる前置詞となります。したがって、「~すること」という表現にするには、動名詞にしなければなりませんので、注意が必要です。
(例4) This movie will make him move.
「この映画なら彼を感動させるだろう」
この文は、1語ずつ訳すことで「この映画は、彼に感動させることをつくる」というイメージとなります。使役動詞makeは「することを作出する」のイメージですが、感動するのは映画の上映中からという可能性もあります。したがって、使役動詞と原形不定詞とで表される動作に、to不定詞ほどの場面の「開き」がないイメージになります。このことから、使役動詞makeでは、「実際の具体的な動作」になじむため、原形不定詞moveを使うことになります。
また、法助動詞のあとに求められるのは「動詞の原形」ですが、この「動詞の原形」も、厳密にいうと、原形不定詞となります。というのは、主語や単数・複数を問わずに、原形のまま使えるからです。
(例5) I can speak English a little.「私は少し英語を話すことができる」
主語が3人称単数であろうが、複数であろうが、法助動詞canの後ろに動詞の原形が来ることになりますので、不定詞の意味を満たしています。
次に、使役動詞でもto不定詞を使う場合です。
(例6) I’ll get my father to repair my bike.
「私は父に自転車を修理してもらう」
この文は、使役動詞getを使ったものですが、他のhave, let, makeと違い、【なんとかしてやってもらう】というニュアンスが含まれるため、原形不定詞を使った「してもらうことを得る」ではなく、「してもらう方向を得る」という、to不定詞をとることになります。
使役動詞については、Day 8 【動詞のおはなし ②使役動詞と知覚動詞】をご覧ください。
練習問題
21.次の(1)~(6)の英文中の( )内の動詞を、適する形に直しましょう。ただし、1語になるとは限りません。また、直す必要のないものもあります。
(1)I want ( have ) another glass of water.
(2)They have ( practice ) hard ( win ) the first prize.
(3)Finally, I got my teacher ( answer ) my question.
(4)This music made me ( move ) hard.
(5)( know ) the truth sometimes becomes cruel.
(6 I would ( like ) ( have ) a cup of tea, please.
練習問題20.の答え
(1)① There is something wrong with my laptop. It needs to be repaired.
「私のノートパソコンに不具合がある。修理が必要だ」
② There is something wrong with my laptop. I’ll get ( it )( repaired ).
「私のノートパソコンに不具合がある。私はそれを修理してもらおうと思う」
(2)① Someone went into the hospital and stole some medicine yesterday.
「昨日誰かが病院に押し入り、数種類の薬を奪った」
② The hospital ( had ) some medicine ( stolen ) yesterday.
「昨日、病院では薬が盗まれてしまった」
(3)① When I used this saw, I failed to cut timber and hurt myself.
「こののこぎりを使った時、私は木材を切り損ねて自分を傷つけた」
② I ( got )( injured ) when I failed to cut timber with this saw.
※injureを用いる。
「私はこののこぎりで木材を切り損ね、傷ついてしまった」
(4)① Many people believe that Japan is a safe country.
「多くの人が日本は安全な国だと信じている」
② It ( is ) ( believed ) that Japan is a safe country.
「日本は安全な国であると信じられている」
(5)① I must get rid of this garbage today.
「私は今日、このゴミを取り除かなければならない」
② This garbage must ( be ) ( got ) ( rid ) ( of ) today.
「このゴミは今日、取り除かれなければならない」
(6)① They lost sight of him at once yesterday.
「彼らは昨日、一瞬のうちに彼を見失った」
② He ( was ) ( lost ) ( sight ) ( of ) at once yesterday.
「彼は昨日、一瞬のうちに姿を消した」
(※見失われてしまった→姿を消した)
(7)① They hand in the application form for searching him to the police.
「彼らは彼の捜索願を警察に提出する」
② The application form for searching him ( is ) ( handed )( in ) to the police.
「彼の捜索願は警察に提出される」